私は20代で千葉敦子さんの本に出会った。千葉敦子さんと言っても、もう知らない人も多いかもしれない。1987年に乳がんの再発、転移でアメリカで亡くなられたジャーナリストだ。彼女が若い女性のために書いた「ニューウーマン」という本は、考え方が当時としては斬新で、本当に感銘を受けた。その時は既に彼女は「乳がんなんかに負けられない」という本で、当時としては珍しかったがんの告白を赤裸々に書いておられた。その後も亡くなるまで、がんとの戦いや、生き方についての考え方を書き続けられた。 

 ちょうど彼女の本を読み始めた頃、母が検診で引っかかり、詳しい乳がんの検査を受けた。結局なんでもなかったのだが、私は千葉敦子さんのがんに関する本を全部買って読んだ。今回の一時帰国中に、その本を全て読み直そうと思った。おそらく最後に読んだのが20年近く前で、まだ千葉敦子さんが亡くなった年齢に達していなかった。でも今はその年齢をとっくに超え、がん患者となっている。

 もう30年以上前のことなので、当時の医療技術は、今よりかなり遅れたものだっただろう。でも彼女の病気に対する姿勢は、本当に見習うべき点が多かった。実際、彼女は自分で胸のしこりを見つけ、それは2cm以下の小さなしこりで、最初はリンパ節転移もないと言われたようだ。それだと1Aという判断になる。 でも1年半後に再発、その後も再発転移があり、結局最初の乳房切除手術から6年後に亡くなられた。

 彼女は亡くなるまでずっと一人暮らしを続け、家族ではなく、多くの友人に助けられて病気と闘った。常に人生に目標を持ち、がんになってからも、中期目標、短期目標をたて、それに向かって生き続けた人だ。約30年ぶりに読んだ本もあったが、あらためて彼女の強さを感じ、見習いたいと思った。そして今の医療技術なら、彼女があれほど早く亡くなることはなく、もっと多くの本を出しておられただろうと思った。

 彼女が亡くなる2日前まで書き続けられた「死への準備」日記は、読むのが苦しくなるほどだったが、彼女の強さを一番感じられた。日本で何軒かの本屋をのぞいてみたが、もう千葉敦子さんの本は一冊もなかった。図書館か、アマゾンや楽天ブックスの古本でしか見ることができないのかもしれない。でも、がんにかかった人は、ぜひ一度読んで欲しい本だ。もちろん彼女の強さは、見習いたくても無理なほどで、書評には彼女の考え方は上から目線だという意見もある。実際、がんを経験してから読むのは辛い部分も多かったが、(特に彼女が1Aからの再発ということにショックを受けた)自分の人生を自分でコントロールして、悔いのないように生きていきたいという気持ちが強くなった。 




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