高齢化社会という言葉はもう耳慣れたものだが、実はよく似た言葉があとふたつあり、ちゃんと定義も決まっている。65歳以上の人口が全人口に対して7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」というそうだ。
日本は大阪万博が開かれた1970年に「高齢化社会」となった。1994年には14%を超え、2007年には21%を超え、以後ずっと「超高齢社会」だ・このままいくと、2036年には33.3%、2065年には38.4%となり、全人口の25%が75歳以上になると予測されている。
総務省が発表した統計によると、9月現在で65歳以上の高齢者は昨年より6万人多い3627万人で、総人口に占める高齢者の割合は29.1%だ。これは世界一位で、続くイタリア(24.1%)とフィンランド(23.3%)を大きく離している。
一方「働く高齢者」の数も増えている。昨年65歳〜69歳の就業率は50.3%(男性60.4%、女性40.9%)で過去18年間連続で増加傾向にあるそうだ。
これは法制度が変わってきたためだ。政府は2006年から段階的に定年を延長し、2013年に65歳に引き上げた。そして企業が、定年廃止 or 定年延長 or 継続雇用制度を状況に合わせて選択できるようにした。
企業も、60歳以降は契約職など低い賃金で雇用継続する方式を取り入れたり、66歳になっても労働者が働ける制度を導入したりした。 そして政府も去年から70歳まで働けるように「高齢者雇用安定法」を施行した。
いいことばかりのように聞こえるが本当だろうか。新聞の投稿欄には、時々「高齢者の仕事探しの困難さ」を嘆く声が載っていたりする。「年齢不問」と書いてあっても、60歳を過ぎていると、面接にもたどりつけないこともあると言う。
働いている高齢者のほとんどがパートタイムやアルバイトで、労働条件は良くないことが多い。それまでの経験や知識を生かした仕事を続けていけるのは、本当に限られた人たちだけなのだろう。
そして日本の65歳以上の高齢者の貧困率は、経済協力開発機構の13.5%よりかなり高い20%だそうだ。実際、年金だけでは生活していけず、かなり肉体的にもきつい仕事についている人も多いとYouTubeのニュースで見たこともある。
では65歳以上の人は、経済的に問題がなければ働きたくないと思っているのだろうか。私の周りは60〜70歳くらいの人が多い。自分が62歳なので、昔から親しくしている元同僚の友人たちというのがその年代なのだ。そしてそのほとんどの人が、まだ働いている。
公立校の教員は60歳で定年を迎えるが、65歳までは再任用という形で週3日か週5日を選んで働き続けることができる。週5日だと60歳までと仕事はほとんど変わらないが、給与はがた落ちらしい。65歳を超えても非常勤講師として時給制で働くことができる。私の友人たちが働くのはお金のためではなく、「まだ働きたい」という気持ちのためだと思う。
日本人の平均寿命は男女とも80歳を超えた(男性81.64歳、女性87.74歳)。そして健康寿命も75歳に近づいている。私の母も75歳くらいまでは、私と一緒によく海外へ出かけていたが、歩くのも食べるのも私と同じようにしていた。
60歳で仕事を辞めると、年金受給までの5年間は無収入、そして75歳までの15年間も体力も気力も持て余してしまうかもしれない。それに4人に1人が65歳以上の社会で、元気な高齢者が何もしないのは、社会にとってもプラスにならないのだろうなあ。
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