私が若い頃に見たテレビや読んだ小説では、がんは本人には告知されず、家族がこっそり呼ばれて告げられるというシーンがよくあった。でも体調が悪くなれば患者も疑心暗鬼になるだろうし、家族も隠し通すのは難しいのではないかと思っていた。

 大学の頃、英語の授業で、「がんになった時、本人に告知すべきか否か」というディベートをさせられたことがある。自分を当てはめて考えた時、私は告知してほしいと思ったのだが、「告知すべきでない」という意見をいうチームに入っていたので、自分の考えと矛盾した意見を考えるのが大変だった。

 先日目にしたネットの記事によると、最近のがん告知はずいぶん変わってきている。個人情報保護法が出来てからは、まず本人に真実を告げ、それから「家族にそのことを話してもよいか」を本人に尋ねるのが筋となっているらしい。でも重篤な場合は、患者の精神的なダメージを考慮して、医者の判断で家族に先に伝えることも許されているそうだ。

 もし私が日本の病院でがんを見つけられていたら、どうだったのだろう。CTを撮っても結果はその日に分からず、電話がかかってきて、「家族と一緒に来てください」と言われたのだろうか。

 タイでは、家族のことは何も言われなかった。というより、再検査を受けたいと病院を訪れたその日に、「90%の確率でがんだから、すぐ手術をした方がいい。いつにしますか?」と言われたのだから。もちろん腫瘍が小さく、手術できると判断してくださったためだが、今でもその日の衝撃ははっきりと覚えている。そしてすぐに夫に相談できなくて、頭の中で思考が空回りしていた時のことも。

 今振り返ると、タイで告知され、そのまま手術をして良かったと思う。手術前も、退院後も自分1人で対処しなければならなかったが、そのおかげで回復は早く、日常生活に戻れたのも早かった。

 そして私は、自分の人生に責任を持つためには、どんな重篤な状態でも、家族より先に知りたいと思う。夫婦であっても、やはり自分の人生は自分で決めたいと思う。



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